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幅 : 11.7cm 高さ : 7.7cm
黄灰釉茶盌(きばいゆう ちゃわん) 岡田優様作
――「刈り取りを終えた稲田の黄金が、やわらかな夕陽に染まる」
しっとりとした黄灰色の釉肌は、晩秋の田園を思わせる柔らかな黄金。光を受ける角度で麦わら色から翡翠色の影へとゆらぎ、穏やかな暖かさと侘びの静けさが同居します。桃山期の黄瀬戸(きぜと)や唐津の灰釉に通じる素朴な気配をまといながら、岡田優様らしい端整な調べが息づく一碗です。
本作は、秋の野にそよぐ芒(すすき)を思わせる意匠が随所に潜み、手に取るほどに味わい深い景色を見せてくれます。胴部には二枚葉を象った“V 字葉”のレリーフが彫り込まれ、釉薬がその彫りの窪みに溜まることで陰影がいっそう際立ちます。わずかに張り出してすぐに落ち込む控えめな太鼓胴は、掌に載せたときしっとりと吸いつくような収まりの良さを感じさせ、口縁へ視線を誘います。さらに高台際では白土がほのかに顔を覗かせ、黄味を帯びた黄金色の釉と対比することで、作品全体に温もりと軽やかさを添えています。
茶席での趣向も見逃せません。薄茶を点てると、抹茶の青々とした緑が黄金色の見込みに冴え渡り、湯面にはV 字葉の陰影が映り込みます。茶筅を軽く振り、泡を彫り線に絡ませれば、秋草に宿る朝露の情景が立ち現れ、客の目を楽しませることでしょう。一方、濃茶を盛ると深い褐色が黄灰釉を落ち着かせ、内側に潜む翡翠色が静かに浮かび上がります。碗をゆっくりと回しながら、釉の濃淡が最も美しく映る角度で客前に差し出せば、器の奥行きと季節感を余すところなく伝えられます。
このように、本作は造形と釉調の妙が調和し、薄茶・濃茶それぞれで異なる表情を楽しめる、まさに茶席映えする逸品となっております。
黄瀬戸や灰釉の器は、桃山時代に侘茶の趣向として珍重されました。釉の渋い黄は「稲の実り」や「太陽の恵み」を暗示し、秋の茶事には欠かせぬ景色とされています。本作もその流れを汲みつつ、宇治・炭山の穏やかな光景を写し取り、現代の茶席へと新風を送り込みます。
稲穂色の釉に秋風の葉筋を刻んだ黄灰釉茶盌。掌に据えれば、かすかな温もりとともに収穫の安堵が広がり、茶の湯の「一期一会」に穏やかな実りの気配を添えてくれることでしょう。年月を重ねるほどに釉の艶は深まり、彫り線の陰影は静かに育ちます。ぜひ長く寄り添い、その移ろいをご堪能ください。
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